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マンガ『憂国のモリアーティ』を読んでロウソクと水の危険な関係を知る

[WRITER] ダクトテープ

 

さばい部の編集部も、わたくしダクトテープも、タイトルだけでホイホイ釣られちゃう漫画がありました。そんなホイホイな漫画のタイトルは、『憂国のモリアーティ』。

 

しかも、自宅でもアウトドアでもよく使う「ロウソク」の意外な危険性を利用したエピソードがあったので、サバイバルのために紹介しておこうかと。

 

竹内良輔/構成、三好輝/漫画の『憂国のモリアーティ』は、探偵オブ探偵であるシャーロック・ホームズのライバルオブライバルであるモリアーティ教授を主人公とした漫画。「ジャンプスクエア」にて、2016年~連載しています。

 

という説明だけでは違和感がありすぎる理由は、原作では「苦行者のようである」と表現され、いかにも教授オブ教授なルックスだったモリアーティ教授が、『憂国のモリアーティ』では「キラキラ美青年キャラ」になってるから。

 

駄菓子菓子。

 

憂国の美青年・モリアーティ教授の人気は、原作の苦行者・モリアーティに負けず劣らず、その人気を受けて2019年5月には2.5次元ミュージカルが上演されています。そうです、イケメンとイケメンとイケメンとイケメンが出てくる、ああいうミュージカルです。

 

広大な屋敷を焼き尽くした方法とは?


タイトルどおり、モリアーティは憂国しています。階級社会の腐敗を憂いています。

 

そこで、同志であるモリアーティ家・長男のアルバート、そして実弟のルイズとともに、その類まれな頭脳で、腐った貴族社会を斬って斬って斬りまくり、社会を変えようとしていきます。

 

手はじめにモリアーティが考えたのは、養子先のモリアーティ家のすべてを義兄・アルバートに受け継がせ、次男であった「本物のウィリアムズ」と入れ替わることでした。そのために、ウィリアムズ・ジェームズ・モリアーティになる前の「彼」は、モリアーティ家を焼きます。

 

たった一晩で、特別な準備もなく、広大な屋敷と大勢の使用人を焼き尽くさねばなりません。さて、「彼」は一体どんな方法をとったのでしょう?

 

使ったのは、屋敷中の燭台のロウソクとわずかな水。これだけで、比叡山も吉原もびっくりな大火事を引き起こしたのです。

 

それは、「本物のウィリアムズ」の誕生日の前の晩。復活祭と重なったその日を盛大に祝おうと、屋敷中の灯りを夜中まで点けておくことになりました。

 

このことを聞いて面倒がった使用人たちは、「彼」ら兄弟に燭台の掃除を押し付けます。燭台の数はなんと548!使用人たちは「彼」と弟・ルイズを下民として見下し、つらくあたっていたのです。ですが、ご存知のとおり当時のイギリスは階級社会。それが当たり前の世の中だったんです。

 


貴族・地主などで構成される最上位の “Upper class”
さらに “Upper” “Middle” “Lower” と細分化される中流の “Middle class”
単純労働者の “Working class”
最下層の “Lower class”

 

これらの階級はそれぞれに異なる文化・生活様式を持ち、話す英語も異なりました。よく言われる「Queen’s English」とか「Cockney」のことですね。

 

貴族であるモリアーティ家は当然 “Upper class”。使用人は “Working class”。で、「彼」と弟は “Lower class”、つまり最下層だったのです。

 

そんなわけで、養子先の家族は使用人を「動く道具」と蔑み、蔑まれた使用人たちは「彼」とルイズを蔑みます。悲しいかな、これが産業革命の産物であり、当時の現実だったんです。

 

駄菓子菓子。

 

アルバートだけでは、そうではなかったのです。彼は階級社会に疑問を持ち、その腐敗を嫌悪していました。そんなアルバートの正義感と理想が、超人的な頭脳と階級社会への反抗心を持つ「彼」を引き寄せたのです。

 

ロウソクと水だけで爆発を起こす!?


誕生日&復活祭前日の深夜。同志となったアルバートと「彼」、そしてルイズは、それぞれの立場を利用して完全犯罪に向けて動きます。

 

まず、アルバートが長男の立場を使って、使用人たちの目を遠ざけました。そうしておいてから、「彼」は命じられたとおりに「燭台の掃除」をすると見せかけ、あちこちの燭台の皿にほんの少しの水を張りました。

 

炎で溶けたロウは皿に張られた水を包み込みます。やがて、ロウソクが燃え尽きる頃、ロウで熱せられた水は膨張し、あちこちで小爆発を起こします。その火が燃え移って、屋敷は全焼。助け出された「彼」は、モリアーティ家の次男・ウィリアムズを名乗り、アルバート、ルイズとともに世直しのための新たな人生を歩み始めることになったのでした。

 

「彼」のとった方法はとても危険で、総務省消防庁が注意喚起をするほど。でも、燭台に水を張っておくだけで、なんでそんなに危険なのでしょうか?言っても水だし、火に対しては安全っぽいのに・・・

 

「ロウソク立てに少量の水を残しておくと、ロウが溶けた時に爆ぜて危険である」

 

この注意喚起を促すきっかけとなったのは、2013年に大阪府枚方市の住宅で発生したボヤでした。枚方寝屋川消防組合本部は、「ロウソクを使う前にロウソク立てを水で洗った」という住人の証言に基づいて、再現実験をおこないました。

 

実験の内容は
・ロウソク立ての受け皿に水を垂らして状況を再現
・数種類のロウソクを使用
・実験回数は約600回

 

すると・・・

 

燃え尽きるギリギリのところで、ロウソクに残った数mmの芯が受け皿から音を立てて跳ね上がったのです。約600回中、20回はこの結果が生じました。はじけ飛ぶ距離は最大で約50cmにもなりました。

 

消防庁・消防研究センターも同じ実験をしたうえで、「受け皿に残った水分が、溶けた高温のロウと接触して瞬間的に気化し、空気が膨らむ力で芯が跳ね上がった」という分析結果を残しています。

 

これは、水蒸気爆発による現象です。水は熱せられると蒸発して水蒸気になり、その体積は約1700倍にも膨れ上がります。水が非常な高温と接触し、急激に蒸発して水蒸気になったとき、体積が増大して起きる爆発が水蒸気爆発です。

 

たとえば、マグマが地下水に接触して起こる爆発的噴火の一種が水蒸気爆発だと考えれば、そのとてつもないエネルギーがお分かりいただけるのではないでしょうか。

 

「彼」はわずかな水とロウソクを使って噴火と似たメカニズムを作り出し、大火事を引き起こして一家を殺害したのです。

 

まとめ


ちょっと濡れてたほうが安全かな~とか考えるのは、とんだ落とし穴。

 

ロウソクを使う時は、燭台をよく拭いて乾燥させておきましょう。

 

火の周りに燃える物を置かないようにしましょう。そして何より、火から目を離さないようにしましょう。

 

一般家庭には、400も500も燭台はないから大丈夫!と思うかもしれませんが、油断は禁物。キャンプ、虫除け、花火、アロマ、百物語、お仏壇のお灯明などなど、火やロウソクを使う機会はたくさんあります。

 

そんなシーンで、安全だと思って用意しておいた水が仇になることがあるのです。

 

以上、ロウソクと水の危険な関係でした。

 

戸締まり用心、火の用心、戸締まり用心、火の用心♪

サバイバルポイント

最近の子どもは火で遊んだり水で遊んだりしないので、逆に、火や水の怖さを知りません。

子どもの頃に、軽く火傷したり、軽く溺れたりしたことがある子のほうが、リスクを体感しているという点で、サバイバル能力は高いのかもしれませんね。

「軽く」っていうのがポイントですが。