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マンガ『嘘喰い』を読んであえて切り札を手放す心理戦を学ぶ

[WRITER] ダクトテープ

突然ですが、夜行妃古壱(やこうひこいち)さんをご存知ですか?
眉毛がチャーミングなシルバーグレイの立会人です。

立会人とは、賭事の立会人。
「週刊ヤングジャンプ」連載中のギャンブル漫画『嘘喰い』に登場します。

 

本当はここで、いかに夜行さんがチャーミングな人なのか語りまくりたいところですが、それではサバイバルできないので、代わりにギャンブル漫画ならではの心理戦に見るテクニックをご紹介します。

ああ、でも待って無理!
「駄目っ!!」って言う夜行さんの尊みだけは語らせて!

 

「駄目っ!!」

 

駄目ですか、そうですか。
夜行さんも駄目って言ってることだし、しょうがないから話を進めます。

 

さあさあ、いきますよ~
「切り札」「手放したくないもの」を、
あ・え・て手放すことで相手を油断させ裏をかくテクニックです。

 

テキストは漫画『嘘喰い』の第1エピソード「廃ビル編」

メインヒーローである斑目貘(まだらめばく)が、青年・梶隆臣(かじたかおみ)と出会い、夜行さん(尊い)を立会人として最初のギャンブルに挑むエピソード。
このギャンブルで、貘は梶を賭郎会員にすることに成功、その野望の足がかりを掴みます。

 

「廃ビル編」でのギャンブルの勝利条件は、賭の相手であるQ太郎が所有する廃ビルから現金一千万円を持って逃げること。
もちろん、そこには危険な仕掛けがいっぱいあるわけです。

 

 

10話で追っ手に迫られた貘と梶。
しかし、貘は「ここからは武器が生命線になる!」と言いながら、唯一の武器であるベレッタを落としたまま、その場を後にします。

 

そこへ追いついた二人組の追っ手。
一方が「ぶっ殺してやる!」と勢いがいいのに対し、もう一方は非常に冷静で「クレバーにいこう」となだめます。
その言葉に一方も冷静さを取り戻し、二人ともトラップが解除されているかを確かめつつ確実に行動して、貘と梶を追い詰めようとします。

 

ところが。
追っ手の男は、せっかく取り戻した冷静さを再び失うような光景を目にします。

何とそこには、ベレッタが転がっているのです。
そう、先ほど梶が落とし、貘が「生命線だ」と言った唯一の武器、ベレッタが・・・

 

これを見て、追っ手の男はすっかり高揚してしまいます
再度、勢いづいて、貘と梶を目掛けて走り出しました。
そして漠を視界に収めると、もう、冷静な相方の言葉を聞く耳は持ちません。
ベレッタへの細工の可能性を指摘され、かろうじて武器を持ち替えたものの、素手の貘に一目散に向かっていきました。

 

そして、ビルにこだまする絶叫・・・

 

それは貘のものではなく、追っ手の男のものでした。
あえて残してあったワイヤートラップにひっかかったのです。

 

一旦は冷静に行動した追っ手の男でしたが、
「獲物に武器はないという絶対的な高揚感」を得たことで、すっかり油断してしまったのです。

 

「××するわけがない」という心理を利用する

 

 

相手の絶対的不利、かつ自分の絶対的有利という「高揚感」さえなければ、冷静にトラップを回避できたのかもしれません。
貘は、「切り札であるベレッタをあえて落とすわけがない」という相手の心理を利用しました。
思考を停止させるだけの高揚感を与え、まんまと油断させたのです。

 

22話の「500円玉」も同じです。

発信機が取り付けられた500円玉をQ太郎の元へこっそり戻すことで、貘と梶は居場所をごまかして作戦を成功させます。
「ビルを出る間はそう簡単には手放さない」と思われるお金、しかも疑いやすい「餌」としての一千万円のほうではなく、余興の段階で受け取った500円玉を手放したのがポイントです。

 

盗聴器に気付くなど、十分に警戒していたQ太郎ですが、発信機が自分に戻っていたことには最後まで気付けません。
「手放さない」という思い込みからくる油断と、余興の500円玉という意外性が作り出した盲点でした。

 

「あえて手放す」ことの狙いは、相手に心理的優位を錯覚させること。
成功すれば、実際に優位な状況に立つのはこちら(手放したほう)なのです。

 

「あえて手放す」はどんなタイミングで使えるテクニックなのか?

単純に、トランプ将棋麻雀などの心理戦が一般的でしょう。

 

 

もうちょっと修羅場な感じにも使えます。
たとえば、あえて雨の日に傘を置いて席を立つことで「取りに戻る」と思わせれば、尾行をまくことができます。

 

ですが、日常生活ではそんな土俵際に追い込まれないように暮らせるのがいちばん。
切り札を捨てて自衛するような危険に巻き込まれない健全な生活を!

危険な生活は「駄目っ!!」です。

サバイバルポイント

あえて武器を手放す、あえてお金を手放す、あえて本拠地(城)を手放す──どれも有効だ。やってはいけないのは、あえて命を手放すこと。これをやったら、サバイバルは終わりだ。